日本人の特性

オリンパスのウッドフォード前社長が日経の取材で、同社が英企業買収の際にアドバイザーに支払った手数料に不明な点を指摘した。そして同社を追及すると批判した。
また大王製紙の井川前会長がグループ企業からおよそ105億円を借り入れていた問題で、前会長は2011年3月、顧問の父親から借り入れをやめるように忠告されていたにもかかわらず、その後も巨額の借り入れを続けていたことがわかったという。
これら企業は株主に対する背任であろう。そして経営者には責任力というか当事者能力が欠如している。モラルも倫理観もみえない。経営者が社外に対する良識を失っている。
そして繰り返される九州電力の問題は、現象面だけでなく本質面では同じである。九州という地政学的に独立した領土を占有している。上記2社の経営者と同じ発想でモラルも倫理観もない。
これらの一義的な被害者は株主だが、さらに従業員でもある。オリンパス大王製紙九州電力の普通に勤勉な大勢の従業員は、おそらく「経営層の犯行」にひどく心を痛めているだろうし、憤りも感じているだろう。これらの企業の経営者は、株主どころか、毎日顔を合わせている社員たちを失望させ、その家族たちの社会的信頼を「同じ社員であるだけで」失墜させているということがなぜ分からないのだろうか。
これは日本の政治家と官僚にも同じことが言える。官僚の縦割り自己省庁優先主義、政治家の党利党略主義。これらは馬鹿な企業の経営者と同じで、自分たちの傲慢な利己主義が勤勉な国民を傷つけ、「日本だから」というだけで世界の良識や市場から阻害されつつあることが分かっていない。
学者もそうだが、経営者、政治家、官僚と、権力を少しでも握ると途端に横柄になり、普通の人たちの視線をすぐに忘れてしまうのは日本人の特性なのか、島国民族の特質なのだろうか。

防災指針のインパクト

内閣府原子力安全委員会が防災指針案で、避難や屋内退避措置がとられる範囲を30キロ圏(UPZ)への拡大を示した。関係自治体が約3倍、避難対象人口が最大6倍になる。これとともに半径5キロ圏の「PAZ(予防防護措置区域)」内の住民は、直ちに圏外避難するよう求められる。
これにより原発をもつ電力会社に対して安全協定の締結を求める自治体は増加するだろう。
その結果、原発に対する運転や維持のコストが電力会社のみならず地方自治体でも膨大な額になる。それに住民の移動は物理的に無理な場所もある。
それでも原発の電気は安いと、安全だと、経団連やエネ研は言い続けるのだろうか。経団連もエネ研も原発擁護学者も避難する住民の目線に立った考え方が全く見られない。
卑近な言い方だが、彼らは本当に原発の近くに住んでみるべきだろう。

どっちの発言が大事か

平野復興担当相が東日本大震災津波について「私の高校の同級生で逃げなかったバカなやつもいる。」と述べたことに関し、マスコミが騒いだ。今度は大事に至らずに済んだようだ。もしも平野氏の発言が泣きながらだったら、どうなっただろうか。マスコミは騒いだだろうか。海江田氏は国会で泣いたが、平野氏は海江田氏よりまともな感情を出すことができたのかもしれない。

それよりマスコミは先週、G20で発言した安住財務相を取り上げるべきだ。彼は消費税を5〜10%へ来年(2012年)に法律をしっかり出すと世界に公約したのだ。こちらの方が職権乱用で問題ではないか。増税を安易に考えて発言してしまう安住氏のこの行動を、マスコミは平野氏の言動と区別がつかないくらい、ワイドショー化しているのだろう。

CSRはどこへ

九州電力経産相の鶴の一声で、「やらせメール」問題の最終報告書で否定していた関与を認めることとした。第三者委員会の言うことは聞かないが、経産相は別なのか。良く分からない。監督官庁には逆らえない、と述べたそうだ。
九州電力は第三者委員会は無視するが、ぎゃーぎゃー言えば監督官庁の言うことはやっと聞く。これは一般企業としても変だし、地域独占を認められている公益企業としては異常である。
九州電力CSRという言葉をしらないのだろうか。CSRとは、「企業は社会的存在として、最低限の法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけではなく、市民や地域、社会の顕在的・潜在的な要請に応え、より高次の社会貢献や配慮、情報公開や対話を自主的に行うべきであるという考え」のことをいうそうだ。これが電力会社に先ず当てはまらないのが可笑しい。(本当に笑える)
これが九州王国を占有する電力会社の体質であることが明確になった。九州の地方自治体も九州電力からの寄付があるから、言うなりになっていたことは、佐賀県の例でも明らかだ。電力料金で集めた金で地方自治体の民意と権力を買う構造がある。
日本の電力供給構造を一日も早く刷新して、エネルギー維新を起こさなければ、国民だけでなく電力会社の社員も滅びる。滅びないと信じているのは経団連だけだろう。

コーポレートランド

米国のウォール街を占拠するデモンストレーションの対象はコーポレートランドのように、国のガバナンスと行政を超えた企業の専横だと言われている。米国のアップル社も法人税をほとんど払わず、巨大金融機関も国家には何も寄与せず、職を与えていないという。
日本では職は米国よりはましだが、国のガバナンスを超えた企業行動が目立つ。とくに九州電力だ。彼らは地域独占、保護料金という国の電気事業制度の中で守られながら、民間企業目線での営利経営を続けている。だからモラルや倫理は自分たちで決められる、法律も自分たちで決められると誤解しているのだろう。
東北電力再生可能エネルギー買取制度を理解していないような、風力発電の導入計画だと聞く。
これら地方電力会社はあまりにもぬるま湯につかる時間が長かったために、公益企業としての社会的使命を忘れている。それを反省し、変えるには抜本的な改革が必要のようだ。
電力王国の主たちは公益企業としてのガバナンスと行動を超えすぎている。

東電社員の悲劇

福島原発事故は制度災害、そして人災である。もちろん、被災された方、避難された方、今後何十年にもわたって土地を奪われ、生活を奪われた福島県をはじめとする東北県民の方々の辛く厳しい状況は、何事、何人にも比較はできない。できるとすればチェルノブイリの人たちだろう。
一方、次元は異なるがサラリーマンとしての東電社員の悲劇はあまり触れられていないので、考えてみることにする。
彼ら(本稿では原子力本部、企画部以外の)社員は、3月11日から予期せぬ停電で大騒ぎとなり、電力復旧に汗を流した。多くの社員が会社の廊下で徹夜した。計画停電では飛び交う情報と苦情処理に明け暮れた。これらすべてが会社、経営者のリスク管理の欠如と怠業が原因である。
次に社員を襲ったのは給与カットとボーナスの半減である。その後の夏は会社の言うとおり家庭の需要家や自治体向けに「節電」のお願いキャンペーンをはり、エネ庁とは怒鳴られながら折衝した。しかし、需要家による法律下の、そして自主的な節電もあり、同時に会社側の需要データの欠如もあり、電力は余る結果となった。
そしてトドメが、5千人近くの人間の賠償センターへの派遣と異動である。中には30−40代の単身赴任も多い。辞令が出て3-6日で荷物をまとめて家族と離れるのである。邪推だが、多くが管理職や管理職候補ではなく、いわゆる「普通のサラリーマン」が送られたのではないだろうか。そしてそれに続くリストラの発表。賠償センターに派遣された社員の中は、「おそらく俺たちがリストラの対象なのだろう」と感じた人間が多くいたかもしれない。
確かに東電の経営層、原子力本部、企画部の責任が重い。しかしほとんどの社員は普通一般企業のサラリーマンと違わない生活があった。電気を送る使命はおそらく高かったのだと思うし、危機対応で「いい加減な」社員はほとんどいなかったのではないか?
もしも原子力政策が見直されており、福島原発の代わりにガス火力や石炭火力発電所が運転されていたとすれば、彼ら普通の東電社員たちは賠償センターに派遣される運命をたどらなかっただろう。さらに昨今、話題にのぼる発送電の分離がなされていたら、発電所の事故は発電会社が対応し、原子力とは全く関係のない送電、配電、営業小売のサラリーマンは、原子力事故で賠償センターへ異動させられることにはならなかっただろう。
「賠償業務をやるために東電に入ったわけではない」と感じる20代の東電社員が辞め始めていると聞く。しかし家族があり住宅ローンを借りていた30−40代の社員は辞めるにやめられない。彼らの将来は急に暗転したのである。
どんなに素晴らしい設備があっても、人が減り、給料が減り、将来が暗い人材しか残らない東電では、今後の電力の安定供給に大きな不安が残る。
原子力とはまったく何の責任も関係もない社員たちの生活と将来を暗転させたのは原子力制度、そして垂直統合型の電力制度である。しかし電力会社はこの制度を未だに守ろうとしている。電力労組も知らんぷりである。
5千人の東電社員の悲劇がこれら制度の大きな問題点を映し出している。

宗教法人九州電力

九電の真鍋社長が続投すると言う。
そう言えば海江田氏が辞めさせる発言をした記憶があるが、行政は九電に何も言えないのだろうか。それは九電が独占供給、規制料金で収益と会社存続を国に守られていながら、「民間企業だから」というわけだろう。
とすれば、今の電力制度は非常に不公平な仕組みであることが露呈する。普通の民間企業であれば、地域独占も価格独占もあり得ない。国の手厚い保護を受けながら、いうことを聞かないというのは、公益企業の体をなしていない。しかもことさら原発公聴会での「やらせ」は民意誘導というか詐欺まがいとも考えられる。
電力供給を民間企業に任せるのであれば、経営者の任命権、罷免権は経産相にあるべきだ。
枝野氏が今日あたり、発言するかもしれない。あるいは野党が追及するだろう。
もしも野党の追及がなければ、彼らも字原発ムラ、宗教法人九州電力の信者なのかもしれない。あるいはカネで心を売ったのかも。