東電は生き残るか

英ファイナンシャルタイムズ紙は「それでも東電は生き残る 破綻・国有化の可能性低い」と報じているが、以下の点を見過ごしているかもしれない。
*今回の放射能汚染の対ミスで経営陣が(欧米投資家から)集団訴訟を受けて、有罪となった場合には経営層が総退陣する。もしもそれを無視して経産省が経営層を残せば、日本国債が売られることになる。
*清水社長が病床に倒れて勝俣会長が先頭に立った、ということは、清水会長以下の役員クラスには誰も対応できるリーダーシップがない、ということであり、勝俣会長を含む経営層の退陣は経営の真空状態を生む。
*現在、計算されている賠償額には計画停電による補償が含まれていない。今の想定額だけでも相当巨額の資金だが、東電という民間会社がその調達を実施できるか、疑問となる。万が一三井住友のような金融機関が、過去の恩返しとしてその債務を被った場合には、金融機関の格付けそのものが下がるリスクがある。
*今年の夏の停電は避けられそうもなく、食品の棄損だけでなく最悪の場合には熱中症による死者が出る(とくに高齢者の多い日本では)ことが考えられる。その際には賠償額が未曾有の数字になる。
*被災者の支援、計画停電などは長期化すると考えられるし、その間に老朽化した発電所を無理やり運転しているリスクが拡大する。万が一、これらの老朽化した発電所が故障すれば、東電の負担は大幅に拡大する。
会社が存在するかどうかは、資金の手当てだけではなく、一辺に噴出した問題を解決するリーダーと組織があるかどうか、なければ外部からの経営者と(御用学者ではない)識者を迅速に入れられるか、が重要なのである。