原発と偶発債務Contingency Risk

米国からの報道で、東電の経営責任に対する集団訴訟の可能性が議論されている。
また同様な報道でも、メリルリンチ証券のアナリストが東電の賠償金額が最大10兆円だという。
以前にも書いたが、東電の今回の発表は内向きというか国内向けの姿勢であり、海外メディアが見ているという対応ではなかった。また今までは電力事業は国内事業であり、貿易財が入っていないから海外とは隔絶されたままである、という説明があった。
ところが金融の世界はすでに国際化しているのであり、原子力事故ともなれば放射能汚染は海を越えることを電力会社とその経営を監視する(はずの)経産省が看過していた。
今回の一連の事象で、原発をもつ電力会社の経営責任は莫大なリスクを負っていることが明確になったし、その経営方針は世界のチェックを逃れることができないという現実も露わにした。つまり、完全な保護行政による独占経営を行う、日本の電力とガスの経営には、海外からの厳しい監視があることを忘れてはならないのであるが、彼ら経営者+経産省の認識と、海外からの経営チェックにはかなりのギャップがあったのである。
さらに原発のContingency Riskは莫大であり、これを正当に評価すれば、原発の所有と運転は民間企業でリスクが取れないという事態となる。その結果、おそらく日本の50数基の原発の所有と運転は政府の直轄となるだろう。原子力事業の大政奉還である。さらに言えば、大政奉還を受けた政府も原発の運営に失敗すれば、日本国債が紙くずとなる。
今後の日本の新しいエネルギー政策は、原発リスクを取れるのかどうか、という根本的な見直しが出発点となる。