農業にもアンバンドリングを

先週、農業関係の人の話を聞いて驚いた。北海道の生産農家が東京の農協(JA)に入りたいという。その目的は東京で生産物を販売したいからだそうだ。つまり北海道の農家が北海道の農協に入れば、流通から販売までまかせっきりというか、自分で販路を選べない。
これはエネルギーの日本の現状と同じで、生産(発電)と流通(送電)と小売(電力契約)が一体化しており、まさしくプロバイダー・ロジックで固まった旧式のシステムなのだ。
繰り返して書いているが、欧州EUの全部と米国の半数の州では、発電と送電を分離しており(アンバンドリング)その結果、発電部門と小売部門での競争による経営の透明性と効率化をもたらしている。
さらに流通部門を独立させ公共財とすることで、さまざまな発電事業者が流通ネットワークに非差別的にアクセスでき、市場を拡大することができるメリットがある。これらを農業に照らし合わせると、農家が流通と小売を縛られており自由に流通網にアクセスできない現状が見える。農業保護という観点では確かに生産から流通、小売まで一貫体制の方が望ましいという(これはエネルギー会社もそうだが)論理があるが、それは時代性が異なる。
それでは透明性と効率性の点が欠落しており、エネルギー会社の透明性と効率性の議論と同様に、JAの経営問題や投資損失の原因となっている。
一定の農家の保護と同時に創発意欲を醸造する制度への転換が農業でも必要だ。そのためにはエネルギーと同様、流通ネットワーク部門を切り離し(垂直分離)、さらに全国ベースで統合(水平統合)して、さまざまな生産者がアクセスして需要家に財とサービスを届けられるシステムを構築すべきである。
そしてそのネットワークは全国での水平統合と同時にローカルの地産地消のネットワークも併設して、エネルギーでも農業でもコミュニティをベースにした地産地消をもたらす「緑の分権改革」のような市場を創出すべきである。