公益企業のあり方

米国では電気、ガス、通信、交通などの公益事業に関する規制は州ごとに実施されており、いずれの州も公益事業規制委員会(Public Utility Committee: PUCまたはPublic Service Committee: PSC)を設置している。また欧州でもエネルギー部門はフランスのCRE、英国のOfGem、イタリアのAEEGに見られるように独立した規制当局が存在する。
米国の半数の州のように、家庭分野での電力小売が規制されていて電力会社による地域独占が行われている場合には、PUC/PSCはユーティリティ企業である電力会社の約款料金、送電・配電部門の収益性、さらに企業努力による効率化の推進、それによる利潤の配分方法などを細かくチェックして料金と行動規制を認可している。
その代わりにUtility企業は燃料費などの価格転嫁が容易に認められ、また企業の収益が上がれば料金を下げ、収益が落ちれば料金を上げることができる仕組みになっている。ただし電気料金などの公共料金の料金改正はあまり激しい変化がないように、政治力が働いたり、一定のバンドで行われるようになっている。本来のUtility企業は効率化が経営尺度になるのであり、「儲ける事業」を試みたり販売電力量を増やすことが経営目標になってはならないのだ。
独占状態が認められている米国の州や構造分離の進んだ欧州では、PUC/PSCや規制当局が電力会社が独占禁止法に抵触していないか目を光らせている。独占供給者や大規模供給者は市場支配力をもっているので、市場支配力の「行使」による恣意的な料金設定や非規制分野での複合サービスの提供で、自由競争にさらされている一般企業(non-Utility)を圧迫していないか、常にチェックしている。独占企業による自由市場での優先的地位や市場支配力の乱用を避け、市場参加者のイコールフッティングを確保することが規制当局の果たす役割だからだ。
前述のように我が国では規制当局は独立しておらず、コーチと審判が同じ役所で行われている。さらにエネルギー価格が硬直的な(本当は電力のデリバリー・コストは地域、季節、時間帯によって大きく異なる)ため、消費者には自分たちが一体いくらのコストのエネルギーを使っているのか、コストが見えるシステムが提供されておらず、(価格が需給を調整する)価格シグナルによる需給調整メカニズムが働いていない。
省エネ、低炭素の効率的なエネルギー社会を築くためにも、エネルギー市場の改革は待つことが許されない。