日本語の曖昧リスク

先日の本欄でも書いたが、最近の日本語の「〜させていただきます。」は、ただでさえ主語を言わない日本語をさらに曖昧にしている。
とくに英語での会議において、慣れていない参加者が日本語で質問した場合、本当に日本語(主語がない)で尋ねることがある。そこで会議に連れてこられた通訳は、普通、その人の経験に基づいて、質問者の日本語に「通訳の人の想定する」主語を入れて英語を組み立てる。
この通訳の人が、質問する日本人の業界や専門用語、そしてどのような立場かを理解していないと、とんでもない主語が勝手に入れられてしまい、その結果、相手への質問が反対の意味になったり、相手の外国人からの回答がまったく逆になってしまう。もちろん悪いのは通訳ではなく、曖昧な日本語で質問する方である。
主語を省いても相手が理解してくれるという腹芸の発想は少なくとも国際会議においては遠慮すべきだが、毎回主語を入れた表現をしなくとも、ビジネスでは日ごろから主語を明確に意図した日本語を心がけるべきである。