電力3社の無為無策

北海道電力泊原子力発電所3号機の営業運転が11日にも認められる見通しだ。一方、東北電力では電力需給が逼迫している状況を踏まえ、東京電力からの電力融通を140万kW追加して合計170万kWの電力融通を緊急措置として受けることになった。東京電力管内では大口需要家向けの強制的な節電や、家庭での自主的な節電効果で供給力に余裕が出ているためだ。
この背景には東京電力関連の共同火力発電所常陸那珂火力と広野火力が運転再開して、推計で約500万kW程度が供給力として戦列に加わったことがある。東京電力では危機状態を宣伝するために発信してきた電気予報も、反対に電力供給に余裕があることを示す結果となった。
これは東京管内の企業や家庭の努力の賜物だが、東京電力はそれを良いことに東北電力への電力融通を拡大している。確かに被災地の東北地方での電力不足に、東京電力として対応することは必要だが、お隣の北海道電力は何をしているのだろうか。東電、東北、北海道電力は全く何も予見せず、事後的に対応しているだけなのか、呆れかえるばかりだ。消費者にはほとんど情報を開示せず、電力3社の行動がすべて後手後手で、付け焼刃的な対応の連続だ。
まず東北地方の豪雨で東北電力水力発電が運転停止になったこと。東京電力の管内の需要家の協力で管内の電力不足が予想を下回ったこと。そして北海道電力は隣接する東北と東京の電力不足を涼しい顔で眺めているだけで何も考えていない。
これは垂直統合型、地域独占の電力供給システムのもたらした需給ミスマッチが最悪の形で露呈したた姿である。本来であれば、東京、東北、北海道が協調して需要をモニタリングし、必要な電力を(融通ではなく)市場取引によって広域での電力需給調整を行い、供給の最適化を図るべきである。しかし3社とも無為無策で、何のシナリオ分析も行わず、豪雨、猛暑、電力不足に対して後追いの対策しかできていない。原発が停止したら電気代が上がると脅かしているエネ研も、東北の電力不足に東電からいくらのコストでの電力融通があるのか、北海道から供給すればいくらなのか、だんまりを決めている。電力3社の無為無策のコストの付けは消費者が支払うのだ。
今回の事情を教訓として、北海道電力の余剰を東北に供給するための青函トンネルを利用した連系線を敷設し、東北、東京、北海道の3電力を協調・一体運用すべきである。そして東電の電力不足が本当はどのくらいなのか、東北にはいくらのコストで供給されているのか、価格を明示すべきだ。
この3社の無為無策に消費者は腹を立てなければならない。(呆れるばかりの九州電力の時代錯誤もそうだが。)