米国の断末魔

米上院銀行委員会がS&Pによる米国債の格付けを引き下げたことについて、調査を開始したと、ロイターが明らかにした。
一部の報道では、格付け会社による無責任な判断で住宅ローンや自動車ローンの金利が上がり地方自治体の財政悪化にも影響が出ているとしている。
しかしどう見ても米国の債務状況では(日本がとやかく言える立場ではないが)長期債格付けがAAAのはずがない。ドイツやフランス、英国も最高位AAAになっているがこれら各国の財政状況と財務ガバナンスを考えればAAAは過去の物語である。強いて言えばドイツに財政再建能力があるかどうかであろうが、ドイツにはギリシャや他国支援の責務があるために孤高の財務政策を取れない状況にある。
フランスにしても英国にしてもAAAはおこがましい。さらに米国という基軸国通貨key currencyを持つ国では国際収支節度もなく、ドルの下落は国際通貨制度上の当然の結果なのである。したがってドルを持つ米国のAAA陥落は時間の問題だったが、問題の先送りが限界だっただけである。
日本と同様、本当に無責任なのは米国議会と政治家である。榊原氏の言うように、米国は未曾有のリーマンショックという金融システムの崩壊から抜け出せていない。共和党時代からの過度な金融緩和政策による偽物の景気浮揚策によって、見せかけの経済成長と非現実的な労働生産性の向上というドリームが創出されたが、リーマンショックで底が抜け、その甚大な影響からは短期的な財政支出だけでは修正できないほど、金融システムの崩壊は巨大だったのである。
債券化された住宅ローンRMBS自体に問題があったのではなく、サブプライムという虚構のクレジットを創出し、それに対する金融監督制度が機能不全となったことが原因であるし、それを看過し膨張させることによってバブル経済で何とか見かけの経済成長を作り上げた米国の経済運営が破たんしたことが事実である。
軍事支出で行き詰まり、経済運営で破たんした米国が、事実を伝えようとする報道にファシズムと弾圧で臨む日が来たようだ。