日経の哀れ

原発を政争の具にする愚」と題して日経の岡部氏が書いている。
原発安全神話に寄りかかってきた日本人におごりはなかったか。」→これは正しい。しかしおごりがあったのは自民党政権と電力会社であり、日本人ではない。日経こそが自民党と電力会社の大本営発表を増幅した張本人であることを忘れている。
「安全と経済のベストミックスをどこに求めるか。」→ぼやき庵ではさんざん書いているが、原発という巨大で危険度の高い湯沸かし器のリスクを、地震大国である日本は耐えられない。原発に経済性があるという日経の思い込みや、大本営をまだ信じ切っている様は醜い。
「地球責任をどう果たすのか。」→それこそ今回の放射能の海洋汚染で日本は地球責任を果たせていない。これは政権が民主党だろうが自民党だろうが原発事故の回避は不可能であった。つまり原発の技術的限界があることが、地震大国の日本に地球責任を取れないということになる。
「世界がそれをみつめている。原発を政争の具にしているときではない。」→岡部氏はどうすれば「政争の具」にせずに原発を長期的に廃止することができると考えているのだろうか。
脱原発に転換したドイツ、イタリアとは事情が違う。EUは一つであり、原発先進国フランスから融通してもらえる。」→これは勉強不足の日経記者の典型だ。ドイツには原発廃止に沿った国内計画がある。日本ではこの計画さえも経産省が出し渋っている。EU発送電分離を行い、さまざまな電源を送電会社が主体的に取り込んでいる。日本では電力会社が電源を独占したいが故にEU方式を拒否している。日本国内には送電網の運用方式を刷新すれば電力不足は防げる。
「太陽光、風力など再生可能エネルギーの開発は国民的合意だ。その全量買い取り法案の成立が欠かせない。IT(情報技術)や蓄電技術を活用した「スマートグリッド」(次世代送電網)で需要を抑えることも肝心だ。」→これは正しい議論だが、この岡部氏は何が言いたいのだろうか?
「フクシマ後の改革も求められる。地域独占、発送配電一体という電力のビジネスモデルは変革するしかない。原子力行政は厳正な中立委員会に一元化すべきだ。産業構造も大転換のときである。新規ビジネスこそ成長を切り開く。」→これも正しい。しかし発送電分離には電力会社の猛反対がないとでも日経は言うのだろうか?
「時間軸と数値目標を明確にした総合エネルギー戦略を打ち出さなければ、日本経済の不確実性は高まり、企業の海外移転が広がる。雇用不安で国民生活は脅かされる。フクシマ後のエネルギー戦略を担うポスト菅政権の責任は重い。」→これも正しいが、前掲のように国内にはまともな議論ができる知見が残っていない。電力会社の言い分に反する内容の資料はすべて抹殺したからだ。だから時間軸と数値目標など誰も政府内や与野党には作れない。ベースラインが間違っているし、原発の電気が安いとか、原発廃止にしたら空洞化するなどという、虚偽がまかり通っている。
ぼやき庵では、この日経記者のようには菅首相に期待していない。それでもなお、菅氏は誰にも相談しないから、勝手にストレステストの導入や長期的な脱原発を言えたのだ。彼には「壊し屋菅」として働いてもらう価値がある。この日経の記者は、過度に菅氏に期待しているものの、具体的に「政争の具にしない」方策を述べていない。哀れだ。