少し長いショート・ショート

関西電力大飯原発1号機が緊急炉心冷却装置の不具合で停止したことを受けて、8月にピークの6.6%の供給力不足となるため、他社からの調達や需要家への節電対策などを急いでいる。一方、東電管内では企業や家庭の節電効果が高いため、余裕がある日は関西に電力を融通できないか検討中しているという。関西に東電が融通を決めれば、東電の傲慢さがまたまた話題となるだろう。自分たちのミスで電源が喪失し、放射能汚染を起こし、送電という流通部門を閉鎖したために停電を引き起こした結果、何の経済的な補償もなく節電を強要し、無計画停電で死者まで出した東電が、再び需要家を犠牲にして仲間内を助けようとしている。需要家にここまで汗水たらして節電を要請してきた東電の支店・支社の社員が、本店のこのような暴走を決して許さないことを期待する。そうでなければ東電は社内体制の崩壊を招くだろう。

政府が1955年、原発を導入するために初めて派遣した海外調査団の報告書が、原子力委員会の設置を推進する内容に偽装されていたことがわかった、と朝日新聞が伝えている。このような報告書の改竄は氷山の一角であり、日常茶飯である。日本の電力会社、資源エネルギー庁、エネルギー経済研究所など電力ムラが参加したすべての海外調査団の報告書には電力会社の検閲が行われており、電力会社の意向に沿わない内容はすべて末梢されている。したがって、現在の日本国内にある「海外の電力市場に関する情報」は多くの部分で誤りがある。今後の電気事業制度を検討する学者や識者たちは、この事実とは異なる海外市場の情報をもとに議論しているので、議論のベースそのものが間違う可能性が高い。

政府が導入する原子力発電所のストレステストの津波に関する部分について、日本保全学会」(会長=宮健三・東大名誉教授)が政府とほぼ同じ評価項目で独自に試行して、「東電以外の原発37基で津波耐性に問題なし」と発表したと読売新聞が伝えている。津波の高さを9・5メートル引き上げる緊急安全対策が講じられたため、福島第一原発を襲った規模の津波が到達しても、炉心損傷などの深刻な事故を起こさず、安全に冷却できると結論された、という。読売よ、お前もか、である。宮健三氏は悪名高き原子力ムラ筆頭の御用学者であり、柏崎刈羽原発の視察後に「(地震は)歴史的な実験」と発言し、新潟県原発技術委員会を辞任した人物である。このような当事者責任能力の欠けたムラ学者の発表を読売が伝えるのは社会倫理に反している。

昨年の今頃、電力会社の強権には誰も気が付いていなかった。しかしNHK大河ドラマ坂本龍馬を見て、日本の閉塞感と幕末を重ね合わせて「私は坂本龍馬の心意気です」とわけも分からずに言っている輩がいた。さて、本当に日本沈没の事態が発生した現在、坂本龍馬のように幕府(経産省・電力会社)の既得権益に立ち向かい、大政奉還原発国有化、脱原発発送電分離など)を命がけで行おうとする人が何人いるだろうか。それこそ菅首相、黒岩知事、古賀氏や孫社長などを非国民のように眺めている産業界の連中のなかに、昨年「自称・坂本龍馬」を名乗った人はいないだろうか。今の日本に必要なのは、本気で命をかける現代の坂本龍馬である。それにしても大河ドラマの放映は1年早かった。今年の3月までしか意味のない今年の大河ドラマでは、それまで出ていた織田信長が思い出される。最後は身内に殺やられるが天下統一だけは果たした。菅首相にそこまでやらせるべきか。