日経記事の間違いの原因は

今朝の日経の「きょうのことば」に、まちがったデマンドレスポンスの説明がある。
日経はまず、「IT(情報技術)を使って不要不急の電力使用を抑制して需要のピークを引き下げる考え方。需要が増える昼の時間帯の料金を引き上げ、需要が減る朝や夕方、夜間の料金を引き下げて需要を調整する手法などがある。消費者は料金が安い時間帯に電力を使ったり、蓄電システムに電力を蓄えたりする。」と書いている。
デマンドレスポンスの定義は、米エネルギー規制委員会によると次の通りである。
「卸電力価格が高いときや電力供給がひっ迫しているときに、一定期間の電力価格の格差や、電力消費を下げるためのインセンティブ料金に呼応して、需要家側の手段resourcesによって通常の電力消費パターンから電力使用量を変化させること」である。
日経の書いている内容は電力需要のピークシフトであり、IT技術や蓄電システムに関する内容はデマンドレスポンスには通常含まれない。日経の日本でのデマンドレスポンスの憶測である。
さらに日経は「従来、各国は需要に合わせて発電所を建設し、供給力を積み増す政策を取ってきたが、米国は2003年のニューヨーク停電をきっかけに、スマートグリッド(次世代送電網)を核としたデマンドレスポンス政策に比重を移した。」とあるが、米国でデマンドレスポンスの定義が行われたのは、2007年のエネルギー独立保障法(EISA)であり、2003年の米国東部大停電による教訓はあったが、直接は関係ない。またスマートグリッドの定義もEISAだが具体的には2008年エネルギー改善延長法で促進が決まっているので、順序が逆だ。
そもそも日本では、産業向けには法律で一律強制削減だし、家庭向けには節電のお願いであり、「節電すれば基本料金を下げます」の経済インセンティブは産業用の一部の需要家向けしかない。米国では、過去の経済インセンティブを伴わない需要家サイドの削減を需要管理Demand Side Managementと呼び、現行の経済インセンティブに基づく任意節電Demand Responseとはっきり分けている。
日経の記者は日本にある情報で米国発の仕組みを説明するから間違いだらけの内容となる。前掲のように、日本における海外の電力市場の情報は、電力会社がすべて検閲したものしか残っていないので、このように日本国内にある情報だけで説明すると間違えることとなる。日本の情報ガラパゴス、というか北朝鮮のように都合のよい情報しか海外から入れない電力会社と、それを調べもせず鵜呑みにする日経の体質がよく分かるのである。
日経を読むときは、経産省、電力会社、経団連が、こういう風に読者を誘導しようとして書いているな、とくに海外情報は間違っているかもしれないし、大本営に都合のよい書き方しかしていないな、と理解して見るべきである。