国に守られている電力の体質

東電の藤本副社長が、1日から実施されている電力使用制限令に基づき「10〜15%程度電力使用量が減り、夏場は乗り切れるメドがつきつつある」ので、需給環境が厳しい西日本の電力各社に対し「要請があれば、応援融通を検討しなければならない」と述べたという。
竹中平蔵氏は、「奮闘する企業の足を引っ張る菅首相」というコメントを出しているが、「奮闘する企業と料金負担者を欺く東京電力」である。
藤本氏は関西よりも先に東北電力への融通というが、そもそも東電と東北電力は電源が不足しているので、国の電力使用制限令で利用者に節電を強いている。さらに融通という概念は電力会社の隠ぺい体質の発想であり、本来は電力取引とすべきである。そうしなければ、発電コストも取引コストもブラックボックスだ。
これにエネ庁がコメントしていない点も不思議である。本来であればエネ庁は藤本氏の発電をチェックして、国民目線で監督すべきだ。
東北地方の電源不足は、北海道からの電力調達で緩和できる。北海道と東北を結ぶ直流連系線は60万kWしかないが、前掲のように青函トンネルに送電線を敷設し、青森側と函館側の潮流を制御すればよい。直流連系線が運用開始したのが1979年であり、その当時は青函トンネル(1988年開業)ができていなかったのである。
このように利用者の犠牲で目先の利益と利権を追う電力会社の経営体質は、先月の株主総会で一層すべきだった。白紙委任状を出したメーカーやゼネコンなどの株主は、結果責任を取らされている。しかし、株主と同列であるべき料金負担者には何も意見を主張することができない仕組みは間違っている。(料金負担者とは国の料金制度で強制的に電気料金を支払っている需要家のことで、料金負担者という規制制度で電力会社は食べてゆけるのである。)自由化されていない電力制度で、家庭での需要家は最も弱い立場を強いられている。