九電やらせメールは氷山の一角

九州電力の真部社長が経産省の松下副大臣に「やらせメール」問題で陳謝した。しかし新聞報道では信用失墜への危機感はあまりうかがえなかったという。ここで九電が身内の経産省に謝るのは変であり、本来は民意をねつ造したことで九州県民に謝るべきだ。
東日本では原発事故の対応で東電への批判が強まっているし、東電の社員の中には会社存亡の危機感から発送電分離に賛成の社員も増えている。しかし、東電の中枢部や西に離れた九電ではその危機感がなく、依然として脅迫と民意のねつ造や隠ぺいができると思いこんでいる。
今回の九電メール事件はたまたま発覚した氷山の一角であり、これ以外の例は枚挙に遑がないだろう。これ以外というのは九電以外の電力9社も同様の民意操作を行っており、さらに子会社以外にも電力会社に設備を納入しているメーカー、設備工事を請け負うゼネコン、燃料を売る商社などである。
とくにゼネコンは電力会社の利益誘導に専門の対策部署を設けており、接待からゴルフから選挙運動支援まで「さすがにゼネコン」と呼ばれる行動を取っている。
東電の株主総会の際にも論じたが、これら電力にしがみつく日本企業が倫理とモラルを持っていないことが事の本質である。そしてこれらの企業がいかに多くの「電力会社の天下り」人事を受けているか、新聞はもっと調査すべきだ。
電力という日本の中に居座っている金権体質の密室組織を解体しなければ、日本企業の国際競争力は回復しない。それは電力不足とか円高とかの問題ではなく、電力にしがみつく癒着体質が、本来の経済原則や市場メカニズムからかい離した企業行動となり国際競争力を失わせている。韓国のサムスンに負けた弱電業界、シーメンスやABBに負けた重電業界によく表わされている。