原子力のこれから

以前のぼやき庵でも書いたが、原発は止めても完全に廃炉にするには20年以上の年月がかかる。ドイツでは80−90年代に停止した原発は35年もかかるという。チェルノブイリはまだ危険な状態である。
さらに運転中の原子炉よりも使用した後の核燃料を収納しているプールの管理が危険をともなう。福島第一原発の直後に言われていたことは、使用済み核燃料プールの冷却が止まれば、そしてそのプールの水が漏れれば、原子炉よりも数多くの核物質が拡散して被害は悪化すると言う話であった。
つまり、止めても20年超のメンテが必要でさらに使用済み核燃料の冷却には緊張状態が続くのである。
これを民間企業である電力会社が「コストが安いという間違えた論理で」運転するには無理がある。さらに政府に移管する、原発を国有化する、という考え方もあるが、政府もこのお荷物を本音では引き受けたくないだろう。そこで経産省原発を電力会社に押し付ける姿勢となっている。
一方、経産省の「原発推進」は「産業界のメリット」を大義名分にしているが、本当に産業界のためだけを考えた政策で、①住民の健康と安全、②農業と漁業の安全、③国土の保安、を捨象してよいのだろうか。そして①〜③を担保する役所はなぜ何も言わないのであろうか。
しかもこの産業界のメリットも、自画自賛であり、だれも第3者によるチェックを受けていない。前掲のように原発代替エネルギーは高コストだ、という経産省の下部組織が作った計算結果が独り歩きしている。
今朝の日経(経産省新聞または経団連新聞)が一面で「電力危機で空洞化圧力」と再び書いている。原発が止まれば電気代が上がり、国内産業は壊滅すると脅している。しかし、上記の①〜③の視点は全くない。
福島原発事故の影響は世界に及んでいる。しかし、経産省、外務省、電力会社は知らんぷり状態だ。日本の外交姿勢はここでも問われている。
今後に必要なのは、大本営発表の政府ではなく、例えば原発を国有化して第3者機関に運転を委託し、外部チェックを受けるような制度を作ることである。国営化すれば今後、定年などで不足する原子力技術者を一括雇用できるので、今後、終息させる原子炉と使用済み核燃料プールのメンテに十分な人材が提供できることとなる。
原子力政策の見直しには、経産省など行政機関の見直しと外部チェックの働く独立性の担保が必要だ。