経産省の時代錯誤

経産省が来夏の電力需給対策案を検討している。企業の節電を促すため節電分の電気料金を割り引く制度や、自家発電を支援するため電力会社に電気の一定量を卸電力取引所から調達することも求める内容だ。
以前も書いたが、東電は電力需要の1/3を占める一般家庭の電気料金を6カ月連続して値上げしているのに、業務用を値引きするのは産業政策とエネルギー政策の矛盾である。経産省が産業支援するのであれば、国民経済省を作って国民生活を守るべきだ。高度成長時代に生まれた日本の産業重視の政策は曲がり角に来ているのに、まだこの国の経産省が猛威をふるっているのは時代錯誤であり、日本の消費と内需拡大による経済の牽引力を削いでいる。
さらに自家発電を支援することと卸電力取引所から調達することとは話が異なる。まず、自家発電を支援するのであれば、前掲のように送電網を電力会社独占から解放し、欧米のようにどのような電源(再生可能エネルギーを含む)も接続できるように、系統運用ルールを見直さねばならない。また、東北地方の自家発が関東地方のユーザーに届けられるようにするためには、東北電力東京電力管内の潮流制御と連系線の容量管理をオープンにしなければならない。現状の、東北電力東京電力の独占使用と秘密管理では自家発の利用拡大には限界がある。さらに卸電力取引所はプラモデルであり、本来のガバナンスも機能も持つようには作られていない。
経産省の視点はまだまだ供給側のロジックに根付いており、これが世界のトレンドから大きく離れているのだ。現代はスマートフォンに見られるように、いかに需要家・消費者の利便性に合わせてプロダクトを供給するか、が非常に重要である。
日本の経産省のような供給サイドの大本営的な発想と着想では、時代錯誤の電力システムによって弱電メーカーも重電メーカーも海外のトレンドからどんどん引き離されるだけである。