原子力の危機管理体制の刷新を

東電の福島原発の吉田所長の英断が高く評価されている。
吉田氏の行為は高く評価するが、それをシステムとして危機管理体制に取り入れていなかったことが問題なのである。
フランスの国営電力EDFでは原発事故の際の危機管理体制をチェルノブイリ事故の後に発足させ2007年に改定した。
そこでは、対応Action、判断Decision、分析Reflection、広報Communicationのレベルごとに、EDFの現地の発電所EDFの本部、ローカルの危機管理官と中央政府の4か所でそれぞれの組織が対応することとなっている。
つまり現場の所内の対応は現場の原子力発電所長がすべて指揮権をもち、現地の住民避難などの緊急対応は中央からローカルに派遣された危機管理官が指揮権を持つのである。
これら電力会社の現場と本部、ローカルと中央政府の4つのポイントがそれぞれの役割を果たす。それに対して官邸が口を出すことはない。
ドイツが原発に否定的、米国が消極的(DOEのスタッフが原発政策はbenign neglectと表現した)な現在、原発事故の危機管理を見習えるのはフランスしかない。
フランスの原発危機管理体制にとっては、吉田所長の行為は「当たり前」となる。彼の行為を阻害しようとしたシステムがおかしい。
この危機管理体制は今年の年初に日本原子力技術協会に伝えたそうだが、危機管理の脳死した原子力ムラには遠い絵空事に映っただけだったのだろう。