問題は電力会社だけではない

経産省の官僚エゴにただ乗りした電力会社。
経産省は国民のためではなく、業界の既得権益の擁護を旗印に、自らのOBを送り込み、権力基盤を強化してきた。
そのよい例が、電力会社による送電網の地域独占と、全国をつなぐ送電線の建設ブレーキである。後者はいわゆる関所となり、エネルギーの往来を妨げることで、各地域の電力会社の独占を守り続けた。その結果、柏崎刈羽原発の停止に際しては、自前ではぎりぎりの電源しか確保できず、東京は2007年の夏に停電一歩手前まで追いつめられていた。
しかし何事もなかったかのように、経産省も電力会社も国民経済の危機を忘れ去ったのである。
この全国の送電インフラの形成を阻害した電力会社と同じ体質の、過剰保護業界がある。それはガス会社だ。
日本の電気代は家庭で約24-26円/kWhであり、例えば英国やドイツの16円、仏の11円と比べるとはるかに高い。ところがガス代も日本ではkWhに換算すると約15円であり、英独仏の約5円のおよそ3倍の値段である。
彼らは競争せず、地域独占で利潤をあげているのは電力会社と同じである。そして問題は、原子力が止まった時に必要なガスの流通を、彼らが意図的に建設を怠っている幹線カイプラインのせいで、わずかな地域にしか供給できない点なのだ。(韓国には国土幹線パイプラインが縦横に通っている。)
原発事故で責任を追及することも大切だが、今後の日本をみると、天然ガスへの利用拡大の必要性が高まっている。(日本のガス火力発電所の設備稼働率は2009年に48%程度だった。) 日本のガス会社擁護と彼らの既得権益をまもるためのガスの流通網の不整備が、国民生活を脅かしていることを直視しなければならない。
必要なのは、電力網を電力会社から切り離して、全国の電力の流通システムを構築すると同時に、ガス会社からガスパイプライン事業を切り離し、別会社運用で投資を行い、全国どこに居ても停電時にガスのバックアップができるようなインフラを整備することである。甘い汁を吸い続けているガス業界を刷新して、国民のための流通インフラ整備を急ぐべきだ。