今回の教訓はどこへ行ったのか

原子力保安院経産相はまだ原発推進派だという。それは経済政策としての意見なのか、エネルギー政策としての意見なのか、住民を守るという政治家としての意見なのだろうか。
ドイツでは原発全廃を決めており、それが2020年までと加速される動きだ。またドイツに後押しされたEUは、原発安全性テスト実施で不合格なら「閉鎖」も検討するとしている。
これはチュルノブイリ事故のウクライナにドイツが隣接しているからだ。そして日本と競う世界の工業技術の先端国であるドイツがこの判断をしたこと、そして日本もドイツと同じチェルノブイリに近い被爆を経験する可能性があるのに、日本の経産相メルケル首相のような判断をしなくても済まされるだろうか。しかも日本はドイツよりも、はるかに地震大国である。
報道には、世界一安全とされた日本の原発への信頼が大きく揺らいだ、とあるが、原発(というかすべての機械について)は製品の規格・性能とオペレーションの質が求められる。前者がどのようにハイスペックでも、運転(オペレーション)が粗末であれば全く意味が無い。
とくに今回のようなバックアップ電源の点検ミスなどは論外だろう。それこそ東電神話と自己過信というか、東電のプライドが業務に慢心を招き、ミス隠しにつながるのだろう。
国民生活を守る政治家としてではなく、産業界と電力業界のセールスマンである経産相がこのまま原発推進を唱え続ければ、ドイツやEUから神経を疑われるだけでなく、世界の政治から孤立するだろう。
そして国民からは、原子力行政や電力会社の担当者は全員、住居を原発の立地から5キロ以内に引っ越してから、原発推進というべきだ、という声が上がるだろう。他府県からは、東京電力は都内に原発を立地して、あるいはその敷地内に本店を移転してから推進派を名乗るべきだ、と言われるかもしれない。