中東民主化のロードマップを

アラブ連盟のアムル・ムーサ事務総長が次期大統領候補に出馬することを考えている。そして現在の暫定政権も軍部もこれを支持するだろう。また彼はブルームバーグとのインタビューで「1年後には中東には民主化の風が吹いているだろう。」との期待感を述べている。
一方、エジプトのMuslim Brotherhoodムスリム同胞団が、今回の大衆蜂起で自由を得たイスラム法学者ユーセフ・カルダーウイ師をカタールから帰国させたが、同氏が民主化の手柄を独り占めしてさらに今後の政権参加への意欲を表わしていることが、エジプトの懸念材料となっている。このMuslim brotherhoodの権力奪回の戦術を、エジプト国民とジャーナリズムは監視する必要があることは、中東関係の識者も述べている。
一方、エジプトが民主化運動を弾圧していた閣僚を追放した事実は、イスラエルに打撃を与えた。2008年にイスラエルが反体制運動を弾圧していた高官を訴えた運動家を投獄し、その高官はまったく罪を負わせなかったこととの比較で、イスラエルよりもエジプトの方が民主国家であったことが明るみに出たのである。これによって、イスラエルはさらに孤立を深めるだろうし、先週、イスラエルを擁護し国連で拒否権を発動した米国も、まさしく国際社会での孤立化の道を歩んでいる。
本稿で予想してきたこれらのアラブでの民主革命は、米国と旧アラブ諸国との関係を刷新し、イスラエルと米国との関係もパレスチナのガザ解放無しには進められない状況となっている。その意味では20年前の東欧での民主化ベルリンの壁崩壊と同じようなインパクトを作り出している。
今後のアラブ諸国は、米国が想定し望んだ圧政の下での反イスラム政権ではなく、アラブ諸国の国民自らが選んだ反イスラム法学的な政権へと進む兆しがある。そして最も重要なのは、この国民による民主革命がイスラム法学者によるイスラム革命にさらわれないよう、米国と欧州諸国が連携して注意し、正しい世論を形成するために尽力すべきだ。
さらに中東の民主化運動を支援することが中国の民主化運動も醸造することとなり、その結果、軍事ではなく民意による中国の拡張主義への歯止めが期待できるかもしれない。
こういったアラブ民主化のロードマップがあれば、米国はバハレーンに駐留させている第5艦隊の命運を過度に心配せずに、バハレーン王政に正しい民主化支援のメッセージを伝えることができる。81542