エジプトは沈静化?

エジプト革命は沈静化しつつある。ある意味では民主化の勝利とともに、老練な政治家であるムバラク氏の勝利であるのかもしれない。
いずれにしても即座にムバラク氏が退陣すれば、今の日本と同じカオスとなっていただろう。つまりリーダー不在のまま新体制に至れば、政権交代が素人だらけの烏合の集団を生み、その結果国民と国家が被害を受けることは明らかである。シニカルに言えば、エジプトは日本の政権交代から学び、カオスを避けたのかもしれない。
しかしエジプト革命はアラブの方向に大きな転換をもたらした。前述のように、イスラム革命でも反米革命でも思想革命でも無い点だ。それは欧米諸国の情報の欠陥をさらしだし、Facebookなどのあらたなsocial networkによるあらたな民主主義が生まれつつあることを物語っている。その意味では米国も大きな失敗を犯した。それは表面の情報をうのみにしていた、というか、そもそもCIAやNSAの諜報能力が経年変化を起こし、あらたな情報ソースを理解できずに陳腐化したことである。それによって中東における米国の地位は大きく変化するだろうし、米国が民主主義の旗印ではなくなってきているのである。
具体的にはエジプトがパレスチナ寄りになり、イスラエルが孤立し、トルコの地位が中東の安定に大きな影響力を果たす、という展開になるような気がする。
以前にも書いたが、カオスの中の中東に必要なのは、狂信的なイスラエル擁護の米国による偏った民主主義ではなく、中東情勢に沿った民主主義と政策実行におけるリーダー教育であろう。それはMuslim Brotherhoodが台頭しても50年前の暴力集団に戻らないためには欠かせない教育支援である。