チュニジアの政変

前原外相、前経産相の大畠氏、民主党参議院議員の柳澤氏、国際協力機構(JICA)理事の黒田氏などが昨年12月にチュニジアを訪問して、北アフリカでの日本のエネルギー開発協力に関する調印を行っている。さらに1月12日には、 三井造船チュニジア向けの太陽熱複合発電設備導入の事業化調査(FS)を大成建設と共同で実施すると発表している。
これは中国や韓国などに後塵を拝していた日本の産業界が遅ればせながら、MENA(中東・北アフリカ)地域への展開を約すものであった。
しかし先週、チュニジアで起こった大統領追放では、物価高、失業、汚職が主な理由だったとされるが、長期独裁体制や政治的弾圧などに対して若者を中心とする民衆の怒りが爆発したことがその背景にある。この三つの問題は他のアラブ諸国でも発生しているが、穏健なチュニジアで起きたことはアラブ各国に衝撃を与えた。そしてモロッコリビアアルジェリア、エジプトも同様の火種を抱えていることがこの地域の不安定性を表わしているし、この火薬庫が問題の少ないとされるチュニジアで火を噴いたことが大きな懸念材料である。
中国や韓国に出遅れている日本がやっと重い腰を上げた途端に、アラブ諸国での民主化運動が爆発し、政府間の協議が水の泡となる可能性が出てきているのは何と皮肉なことか。
日本が欧米の情報のみに頼り、現地の正しい情報を掴んでいなければ、今年のMENA地域での巻き返しはかなりリスキーなものとなるだろう。現地のコネクションと情報がなく、しかもオールジャパンで臨むという甘い考えが、日本の稚拙な民間外交の失敗となって表れるかもしれない。