「国の威信」は死語か

昔は国の威信をかけて、政治家がリーダーシップをとり、企業家がリスクをとり、官僚がそのリスクをカバーしてきた。
豊かになった(?)今、日本の政治屋は内輪の政局のみしか念頭になく、企業屋では役員がハッピー・リタイヤメントしか頭になく、官僚どもは縦割りの中での自分の成績と天下りしか念頭になくなった。
21世紀の日本の国富を稼ぐために政府が掲げた、原子力、鉄道、スマートグリッド、太陽光や省エネ技術などの産業を新たな輸出の柱として現実的に実施するには、結局、企業がリスクを取れる制度とマインドを持たせなければならない。しかし、実際はこのマインドを変えることが非常に難しい。なぜならば鉄道やエネルギー産業の多くは、長年にわたって過保護行政の中でしっかりと守られ、日本国の中での競争もなく、企業内での競争心も失われてきたからだ。
先週、韓国がドイツのスマートグリッドの実験プロジェクトに参加するとの報道があった。日本勢は同様のチャンスがあっても「いやいや」を繰り返している。このようなエネルギー業界の未熟な経営マインドでは、大型の原子力・ビジネスの商談に臨めるわけがない。
日本は原子力技術、省エネ技術などで世界をリードしているというのは、本当だろうかと疑いたくなる。環境性能が高いという評価もひょっとしたら大本営発表なのではないか、とも取れる。経産省NEDOが巨額の税金を使って技術開発をさせてきたが、モノになったのは何割、あるいは何パーセントなのだろうか。ひょっとしたら、技術開発のスペックが手前味噌でガラパゴス基準とし、さらにNEDOがその結果を勝手にこじつけて評価し、投資した側の責任が出ないように繕っているのではないだろうか、と思いたくなる。
「すばらしい日本の技術」は本当は世界では通用しない代物だから、結局メーカーは海外に輸出できません、という結果になっているのかもしれない。
韓国は国の威信をかけてエネルギー産業を輸出しようとしている。アブダビ向けの原子力の商談でも勝ってる。
一方、日本の政治の体たらくぶり、そして企業経営者の自堕落ぶりにはウェークアップ・コールがないのだろうか。前掲の韓国のニュースも、日経でさえ取り上げない状況だとしたら、日本のメディアはオール大本営発表だ。
メディアを含めて、国の威信を損なう経営者や担当者は一級戦犯である。