逆さまのピラミッド

今日、慶応大学の卒業式で清家塾長が「これから社会に出る人たちは、彼らが生まれたときとは正反対の人口ピラミッドで生きてゆく。」と言っていた。
確かにこの視点は大切であり、企業経営のみならず社会運営においても重要だ。清家氏は1980年代後半の正三角形のピラミッド型人口構成で生まれた若者たちを前にして、これからは逆三角形のピラミッド、つまり高齢化社会でどのように発想と行動を転換するかと問いていた。
しかし清家氏が述べていたことを反対に書き換えれば、「今の50〜60代の経営層や政治化は自分たちが育ってきたピラミッドと逆のピラミッドという社会での経営や国家運営を迫られている。」ということである。例えば今の部長や取締役が育ってきた組織とまったく異なる環境に遭遇しているにもかからわず、彼らが育ってきた慣習や慣例、そして仕事のやり方までを継続あるいは引きずっていないだろうか?
卑近な例で言えば、社内報告書のための作業時間である。昔は正三角形だったので、現場により多くの人間がいて仕事(生産的あるいは収益に影響のある業務をさす)をしながら社内報告書を書くことができた。しかし、今は逆ピラミッドで管理職ばかりが大勢いて部下が少ない状況なのに、彼らが自分たちの育ったペースで社内報告書を下に求めていたら、いったい誰に仕事をする時間があるのだろうか?
これはひとつの例に過ぎない。まさしく逆さまのピラミッドの時代で、それがさらに進展(悪化)してゆく近未来においては、今までの仕事のやり方だけではなく、社会や生活のあり方まで基本的な仕組みを再構築する時期にきている。