最近の有機野菜ブームについて

中国の毒入りギョーザから始まり、中国の汚染(可能性)野菜に対する消費者の懸念が高まった結果、国内産とうたえば何でも売れる時代になった。
国内産の野菜は中国産よりも割高であり、さらに有機野菜はもっと高い。それとともに「道の駅」や「通販の大地」では生産者の顔が見えることで、消費者に安心感を与えて上手な商売をしている。
しかし、ここで問題なのは、何が有機で何が生産者の顔で、それらが中国野菜や普通の国産野菜とどのように異なるのか、基準がまったく明らかでない点である。つまり、生産過程における生産方法、使われる肥料の種類と量、殺虫剤や除草剤の種類や量、土壌の品質や休耕の割合と頻度、など「有機野菜栽培」に関する方法論が体系付けられていないのが問題である。だから消費者は「有機」といえば2割り増しでも購入するかもしれないが、何のクライテリアも存在していないのだ。
そもそも食糧はワインのように、特級畑(grand cru)、1級畑(premium cru)、その他認可畑(AOC)のように、生産物の以前に畑の活力、または生命力、そしてその土壌の特異性(生物多様性など)によって成果物が異なるのである。したがって、「有機野菜」を簡単に位置づけずに、その土壌の分類から始まり、前述のような肥料、殺虫剤、除草剤の種類と量の分類を体系付ける必要がある。
また日本のように海洋資源の豊かな国では、それぞれの季節の野菜をそれぞれの季節の魚介類とどのように合わせて調理(料理)し、それをどのような種類のアルコールとマッチさせるのかの、食糧から調理(またはレストラン)までのチェインが必要だ。つまり野菜だけでは付加価値は認められず、正しい調理とのマッチングでその価値が増大し、さらに消費者への教育(宣伝)によって正しい有機農業に採算性が得られるようになるのである。
最近ではカリスマ農家の人気が高いという。しかし彼らの培った技、土壌の化学(テロワール分析)、マッチングする料理研究、そしてレストラン経営などを体系的に教育する機関が求められている。
有機」「生産者の顔が見える」だけでは、買う方は非科学的な判断に頼っているだけである。