ダムは必要

昨年の9月からしばらく「ぼやき庵」の執筆が止まった。珍しく出張が続いたからだ。
その前の7月と8月には2度のカテーテル処置をして心臓の血管に2個のステントを入れた。9月にはノルウェー、オランダ、ベルギーとフランス。10月は欧州3カ国と米国、11月は上旬に欧州独仏と米国、下旬にインドのデリーと駆け巡った。
ノルウェーは電力の9割が水力発電だった。そして北欧4カ国で電力市場を形成し、さらに送電網も地域連係を深めている。一方、北欧の南端のデンマークは長年、ドイツと同じくエネルギー資源を石炭に依存してきた経緯があり、脱化石燃料の動きで風力発電を大量に導入し電源の4割強を占めるようになった。
風力発電太陽光発電は間欠電源と呼ばれ、風況や日射量で発電量が変化し、いわゆる不安定電源と呼ばれている。これを補正するのが大事であり、北欧ではデンマークの大量の風力発電の“しわ取り”(安定化)の役割をノルウェー水力発電が地域協力として担っている。
つまりダムは水源であるとともに調整“電源”でもある。
ダムは確かに環境破壊にもつながるし、日本ではゼネコンから政治家に流れる金の温床になっていることは否めない。だからダムが悪いというのは卑近な発想である。
資源小国地震大国の日本は、ほとんどすべてエネルギー源を海外からの輸入に依存しており、エネルギー・セキュリティを目指すのであれば(対露依存を軽減させようとする欧州のように)再生可能エネルギーの供給力をアップしなければならない。
しかも大型の原子力発電所には地震リスクが伴うため、これも安定電源にはならない。
つまり将来の日本は、CO2排出量削減のためにも脱化石燃料の政策を推進しなければならないが、そこで重要なのは間欠電源である自然エネルギーであり、さらにそれを安定電源に変える調整電源である。その役割は、揚水発電水力発電かバッテリーしかない。この選択肢はコストと環境であろう。
日本には豊かな水資源がある。そして今後の世界では水戦争が起こる可能性が高い。つうまり日本には水資源の安定確保という命題もある。
ダムの建設にかかわる悪質な資金の流れをストップし(これは小沢氏の“合法的な”行為を“違法”とするように法改正を行い)、環境に配慮するとともに、再生可能エネルギーに不可欠な調整電源として開発を進める必要がある。そしてダムからの電力を全国で最適利用するための、北欧のような送電網の連係が大事である。
日本の各電力会社が明治以前の藩のように独立している国は世界に例がない。北欧では4カ国連係という国の枠を超えた流通システムができているのに、日本では電力会社間の流通もままならない。
日本のダムを水源と電源としてとらえ、水力という低炭素の再生エネルギー用調整電源の確保とともに全国ベースの送電ネットワークを構築しなければならない。