幕末ブームの本当の意味

それは社会の閉塞感である。それは幕末(と同様の経済や市場)の鎖国と(経済や市場の開放という)開国を選択できない政府、産業界による苛立ちである。
産業界と経営者は1980年代と90年代と同じビジネスモデルにしがみついている。しかし日本は少子化もあって市場が縮小する半面、隣国の中国は15億人の市場、インドは10億人の市場として台頭している。つまり日本が生きてゆくためには、たった1億の市場を開放して、企業が10億と15億の市場に出せる製品と同じ基準で開発する市場を国内に整備する必要がある。とくに国内の電気、ガス、通信企業は競争もなく面的独占で開放・自由化を拒否し、鎖国政策に甘んじていることが大問題だ。
今の経営者は自分たちのハッピー・リタイヤメントしか頭に無く、20年後、30年後の企業ビジョンを捉えられないし掲げることもできない。それによる社員の苛立ちと不安感が、幕末で開国を必要とする人心となっていることも理解していない。
国内の巨大産業がまったく競争の無い国内独占体制を維持し、それに従事する何十万人が社外競争を拒否し、社内の報告書書きの論理に溺れていれば、社内優先・社外無視の考え方に洗脳され、社内の経営層を無差別に信奉する尊皇攘夷の考え方しか残らないのは当然だ。そして大企業の矮狭な保護主義が他の大企業に派生し、日本の産業界全体が尊皇攘夷となり、21世紀への新たな競争心を失っていくのである。
電力・ガスの話にしても、構造分離、市場開放と自由を実施し、次世代電力網の市場を拡大し、中国やインドでも勝負のできる製品やシステムを開発できる土壌を日本国内に整備することが急務である。とくに関東地方の場合には一極集中の東京電力を地方の7社に分割して市場支配力を分散し、お互いに競争する気質を作り上げることが日本の陳腐化、世界からのガラパゴス化を防ぐ道である。
そうしなければ産業の海外移転、地方の空洞化が加速し、地方の地元産業依存の電力・ガス会社の収入は急速に枯渇してゆく。地方の貧乏電力・貧乏ガス会社が増え、なぜこうなったのか、と5年先に悔やむのであれば、今から海外の制度と同じように構造分離と自由化を実施し、地元で開発できる産業を育み、活性化を図ることが重要なのである。