エネルギー時評

英国ガス会社のセントリカがフランス電力と共同で英国原子力発電会社ブリティッシュエナジー(BE)を買収したが、最近、セントリカはさらに英国の公正取引局から原発の電力の20%の引き取り権を認められた。
フランス電力は国営電力として、温暖化ガスを排出しないクリーンな原子力ビジネスで欧州と米国での覇権を狙っている。すでに英国のBEを買収し、米国ではコンステレーション電力の原発を手中に収めた。
欧州では、ガスと電力は日本のように別会社で供給される国もある(例:フランス電力EDF、フランス・ガスGDF)が、ドイツのように配給・配電事業は何百もの地方の公営企業が併給している国もある。
また米国では半数近くの電力会社がガスも併給している(例:パシフィック・ガス&エレクトリック)。しかし電力のみ、ガスのみを扱う企業(両方ともユーテチィリテイと呼ばれる公益企業)も多い。さらに電力分野では米国の50州のうち半数近くが小売自由化をしており、電気は家庭でもサプライヤーを選択できる。この小売自由化は欧州では徹底しており、EUでは発電、送電、配電、小売と構造分離しながら、送電をEUベースで拡張し域内での安定供給確保を目指している。
しかし日本は旧態依然である。10電力による地域独占が続き、大口ユーザーに対してのみ僅かな自由化が行われ、家庭分野では固定料金、固定サプライヤーのままだ。安定供給という錦の御旗のもと、総括原価主義による電力供給が行われ(ガス会社も同じだが)、それに守られたメーカーは競争による技術革新の芽を殺がれている。
欧米では安定供給は送電と配電の業務と位置づけられているが、日本では電力会社の中枢である系統運用部が主体となっている。にもかかわらず電源立地を優先する議論が耐えない。要するに送電と配電が独立していないから、系統運用部門はネットワークという当たりまえの概念を喪失し、自社の発電設備(とくに化石燃料)を優先して運用し、電力会社以外の風力発電企業によるネットワーク利用を阻害していると言われる。(この議論は3大電力が送電網を支配するドイツでも同じだ。)
冒頭で紹介したセントリカのように、ガス会社が原子力発電所を(持分として)所有し、その電力を供給することに何の問題もない。またフランス電力のように、原子力覇権を狙って海外展開することにも、問題は無いはずである。
日本は技術的には世界をリードしていると言われるが、国内の保守的な制度設計や内向きな企業行動を見ると疑問に感ずることが多い。この業界では競争と技術革新は不要だと考えているのだろうか。