グリーン・ニューディールについて(その2)

エネルギーのビジョンについては、エネルギー政策と環境政策は英国や米国の例にあるように、次第に協調する動きが海外で見られている。一方、日本ではエネルギーはエネ庁、環境は環境省と対立軸に置かれている。これではエネルギー・環境問題を解決する「グリーン・ニューディール」を実際に実施することが困難となっている。本来は、(資源小国でもない米国でさえも実施しているように)エネ庁がエネルギー省となり産業政策とエネルギー政策を分離し、エネルギー省の中でもエネルギー規制当局を設置すべきだが、日本では経産省がコーチと審判の役割を産業界とエネルギー業界に対して行っている。
さらに環境政策はエネルギーという面において、都市交通や都市計画にも深く係わってくるのだ。その意味でも、環境政策環境省、エネルギー庁(省)、国交省が連係して動かなければならない。それによって初めて日本におけるグリーンエネルギーのビジョンが描けると思う。
電力に限って言えば、まず電力のインフラである送電網と配電網を(通信網のように)開放し、第三者利用を認め、今後増加する太陽光発電をさらに促進するための「市場デザイン」が必要となる。これらによって風力発電の設置も増加が可能となる。
エネルギー・ビジョンは環境ビジョンや都市交通ビジョンと一心同体である。そしてエネルギーのみを考えた場合でも、再生可能エネルギー地産地消が求められる。その際にはコミュニティー単位でのエネルギーの地産地消が経済的で合理的だ。これを実現するための通信やハイテク技術は日本が最も進んでいるが、業界は既得権益や既存のメーカーとの関係を守るために技術革新を伴うシステム導入に反対している。送電網と配電網の開放で、さまざまなメーカーが参入する可能性があるからである。一方、既存のメーカーには電力会社のOBが数多く天下っているため、さらに保守的になる。
役所のメーカーへの天下りには一応チェックが入っている。電力会社やガス会社は公益企業だが、これら電力・ガス会社からの関連企業・メーカーへの転籍ほとんどノーチェックだ。OBが行けば、それこそ先輩後輩の絆の強い公益事業では役所以上に業務発注が恣意的になり経済合理性が失われる。そもそも料金が固定され、燃料リスクが消費者に転嫁され、小売が独占である電力・ガス会社に経済的な経営が目標となっているとは考えにくい点もある。
電力会社の送電・配電網の開放によって既得権益を消しながら、地産地消のエネルギー供給構造を創出するようなビジョンが求められていると考えられる。