ガラパゴスのモノ作り

日本の製品技術は確かに優れている。最近の米国のグリーン・ニューディール政策が多くのエコ関連産業を立ち上げようとしているが、個別の製品の省エネ性能では我が国の製品がすでに米国の目標を凌駕している点がある。
しかし問題が2点ほどある。第1に日本のメーカーは役所のスタンダードで生きてきたし守られてきたから、どのように米国が日本の省エネ製品技術にとって巨大市場を提供していても、自ら進んで米国に市場開拓に行こうという意気込みが見られない。「国内市場とのバランスを考えて」、あるいは「米国企業からの招きがあれば」米国への進出を検討してもよい、という悠長な姿勢である。要するにチャレンジ精神が欠如しているのである。
第2に日本のメーカーはそれぞれにスタンダードを確立して自社製品の既得権益を守ることしか考えていない。以前の携帯電話がその例であり、メーカー各社ごとに充電器が異なっておりスタンダードが欠如していた。最近の例では、太陽光発電機の情報表示システムである。A社のシステムは特定の情報通信スタンダードを使用しているから、決まったメーカーのモニターやテレビでしか太陽光発電情報が見られない。さらに問題は電気自動車(EV)である。B社のEVでは急速充電のためのバッテリーとの通信スタンダードを共同開発した電力会社のC社が占有しており、さらにC社はそのスタンダードを非開示にしてオープンにしていない。
今後B社以外のEVが市場に出回るようになると、街にはB社のEV用の充電スタンドの隣にD社のEV、そしてE社のEV用のスタンドが並べて設置されることとなる。さらには外国メーカーのEV用のスタンドがその周りに乱立することになる。そもそもB社のEVは米国では充電できなくなる可能性がある。米国ではオープン・スタンダードが基本だからだ。
携帯電話メーカーは日本固有のスタンダードで進化したために世界から孤立した。いわゆるガラパゴス化である。これと同じことが、EVの市場でまさしく起きようとしている。独占事業の発想しかない企業Cやそれに引き連られる企業B。そしてそれを看過する役所の姿勢が日本国内でのスタンダードのオープン化を阻害し、さらに優れた技術の国際展開を阻止している。
偏狭な事業姿勢が日本メーカーの成長を妨げてはならない。