経済原則に基づく節電を

東京電力は8月末の電力供給を従来計画から550万キロワット上積みして5620万キロワットに拡大したという。しかも東電・東北電管内の消費者に15%の節電を求め、実行できることが前提で、停電回避というわけだ。
ぼやき庵では以前からこの数字の積み上げに疑問を呈している。その内訳が明らかでないからだ。緊急に立ちあげた火力発電所がどことどこにあり、どのくらいの旧式でどのくらいの運転安定性があるか、客観的なデータがまったくない。
原発事故のデータ隠しよりは影響度が少ないデータ隠しだが、そうはいっても急に電源が喪失すれば、無謀な計画停電に陥る可能性もある。
さらに15%の節電という強制的な仕組みに、国民がはいそうですか、と答えることは、政府および東電の失策の反省を促すことにならないのだ。
米国では20年ほど前まではこういう施策を需要管理策demand side managementと言ったが、現在は需要レスポンスdemand responseといって、需要家に価格シグナルを見せ、経済原則に基づく需要抑制を促している。
需要家の節電行動は、ファシズム的な大本営の強制によるものではなく、経済原則に基づき、価格シグナルによる市場メカニズムを通す方式でなければ、合理性はない。エネルギー政策とエネルギー市場デザインの発想そのものが20年も遅れているし、その姿が今回の「エネルギー政策の賢人会議」の人選に表れている。井の中の蛙たちを賢人とする政府は、お里が知れる。