政治の不作為が経済の屋台骨を揺るがす

イタリアのベルルスコーニ首相は、自分の買春容疑だけでなく、リビア民主化運動でさらに大きな打撃を受けている。
リビアはイタリアの旧植民地であるだけでなく、リビア産の石油とガスがイタリアの国営石油会社Eniの巨大資源であるからだ。実際、イタリアで消費される天然ガスの12%はリビアから買っている。リビアからの天然ガス・パイプラインの送ガス圧力が低下しているとの懸念の声も聞かれる。
だからイタリアは今でもリビアのガダフィ氏の圧政に反する態度を決めかねている。さらにリビアからの難民もイタリアにとっては受け入れがたい問題である。
しかし、アラブの民主化運動はとどまることはないだろうし、イタリアの対応が後手後手に回れば、リビア国内の石油・ガスの生産設備への影響は増大し、さらにリビアに新政権ができた時のその政権との対応にも苦慮することとなる。
現状維持、そして既得権益の確保にのみ目が行く政治では、大きく変化する国際社会から孤立する。そしてそれはその国の経済に大きな打撃を与えることとなる。ミラノの証券取引所は株価を下げ始めている。
日本の周りにはリビアのような関係の国は少ないが、資源小国の日本にとって、MENA中東北アフリカとの外交関係を刷新する必要がある。
イタリアを反面教師とするMENA外交の新機軸がなければ、ただでさえ財政面で脆弱な日本経済がイタリアを超えて落下することとなる。