酒飲みの教育

外人の中には日本茶を超薄くして飲んで、味がわからない人がいる。
またご飯の炊き方も分からないから、日本食の本当のおいしさがわからないこともある。
日本酒も、吟醸酒を熱燗にしたらふくよかな香りもコクも飛んでしまう。
ワインはもっと複雑だ。しかし、知識のないことは悪いことではなく、教えてもらうという心の広さが足りないだけだ。
ワインでは赤と白では扱い方に雲泥の差がある。
白ワインは冷やせばよいというのではなく、ぶどうの品種によって、またビンテージによって適温があるが、だいたい15−17度も冷やせば十分だ。しかしわけも分からずワインクーラーに突っ込んで、冷えすぎた白ワインを飲む人が多い。
ソービニヨン・ブランはかなり辛口で繊細なので、冷やしすぎると味も香りも分からない、一方、シャルドネ系でコクの強いものは、料理に強すぎることがある。そのときは冷やし目にして、料理の邪魔にならないようにしてもよい。
問題は赤である。軽めのブドウであるピノノワールは繊細で、若い場合には開栓して30−45分で香りが消えることもある。そんなときに冷やしたら何もない。
ピノノワールでもオレゴンのウイラメットバレーの若いものは、開栓か30−60分でやっと花が咲き乱れ、その後45分くらいで終了となる。ブルックスなどの秀逸のものは、最初はガメイのような荒々しさがあり、しまらくするとピノ本来の花の香りに移り、終盤ではまるで上質のメルローのように三変幻を遂げるものもある。
一方、カベルネの出来の良いものは、最初から深い香り森の奥に連れ去られる。しかし若いカベルネはタンニンが抜けていないので、デカンタした方が飲みごろが速くなる。
要するに赤ワインはタンニンの抜け具合との戦いで飲む。冷やしたりすると、タンニンの飛びが遅れて飲みごろが後にずれる。
早く開栓しすぎた場合は、逆に再度栓をしてタンニンの抜けをわざと遅らせることもできる。
いずれにしても、白ワインを冷やしすぎたり、赤ワインを冷やすのは(夏の暑いときに安い赤ワインをがぶ飲みする以外は)非常識だ。さらに開栓した白ワインや赤ワインにわざわざ栓をかぶせるのもまったくワインを飲む意味がわかっていない。
そういう輩がいたら、失礼を承知の上で、堂々と「それは間違っていますよ。」と言ってあげよう。