アバターと普天間基地問題

この共通項は海兵隊である。米国に親しんだ人間であれば海兵隊がどのようなものかを知っている。しかし、ほとんどの日本人は海兵隊が何か、どのような役割なのかおそらく知らないのではないか。
米国の軍隊には、陸海空の三軍プラス海兵隊がある。英語ではマリーンという。いわゆる実戦部隊であり、常に前線に立ち、体を張って国を守る部隊である。三軍は近代的な軍隊で、先端機器で装備された航空機やミサイルや艦船をもち、立派な指令本部から作戦を練って計画的に行動する。一方、海兵隊は肉弾戦の実践部隊であり、それこそ絶大な国家への忠誠心と完璧な指揮系統、そして何よりも自己犠牲の精神が叩き込まれている。
悪い言い方をすれば、自ら考えるよりも命令されて行動する軍団であり、三軍にとっては海兵隊を下に見る向きもある。知識や言葉よりも、自らの血で国を守るという勇敢な兵士ソルジャーなのだ。そして彼らの誇りは、勇敢さと愛国心と忠誠心に支えられている。
アバターではこの元ソルジャーが自らの任務(この場合では国のためではなく希少資源の入手という商業目的だが)に疑問を感じるのである。そして商業利益のための殺戮と自然破壊に立ち向かう。この映画では、海兵隊のソルジャーとはこういうものなのだ、という現実が理解できる。その点をどれだけの鑑賞者が感じるだろうか。
これを普天間の問題と結びつける。彼らは沖縄駐留の他の米軍部隊からは必要悪と見られている。海軍は「一緒に行動できるわけがない」と考えるのが当然だ。しかし万が一有事となれば、彼らは日本国のためというよりは米国海兵隊兵士という誇りをもって、米国の軍事前線を守ることに身を捧げるのだ。
口から先に生まれてきたような、そして勇気も愛国心もかけるへなへなの連立与党の人間には到底理解できないような愛国心と勇気がある彼らを、平和ボケでトボケた民主党が、県外移転とか国外移転とか真剣に考えているとすれば、それこそボケつを掘ることとなる。
沖縄の地理を見れば、徳之島からでは遠すぎる軍事ラインの重要性が見えてくる。これは中国と北朝鮮とロシアに対する軍事ラインであり、台湾を守ることが西側陣営の重要課題であることにも関係してくる。
ましてやテニアンなど論外であることが、なぜ与党として理解できないのであろうか。テニアンに移設することは軍事防衛ラインを何百キロと退くことと同じであるということが、なぜ彼らに分からないのか不思議である。
人の命が大切だという声を張り上げていた首相が、あっという間に人を死刑にする隣国に対して自国の防衛ラインを退かせます、というのは大罪である。